◇普段の学び、営みを将来につなぐ

 

当社のキャリア教育は、仕事を体験するといった直接的な職業教育ではありません。
「普段の営みや授業で得られる力」を「将来必要な力」と結び付けながら育む手法を重視しています。

その一つが小学校教諭と連携して開発した〝新聞形式ノート〟教材「新プリ」です。

教材は、最初に重要な内容を書いたり、ビジュアルや見出しを重視したりする「新聞の型」を、普段のノート代わりになるように枠などを整理。

各単元のまとめ用からグループ活動用まで5種類あります。

新学習指導要領では「学校での学びを社会に出てからも生かせる」教育が重視されている中、勉強のインフラに当たるノートに着目。

使用を通して、実社会で必要な編集力や発信力の習得を促すのが狙いです。

◇名前の由来
「新聞」の「新」と、「新たな」の「新」に、「プリント教材」の「プリ」を加えて「新プリ」です。

◇4種類の「新プリ」とは

(1)新プリ〈各教科の単元ごとのまとめ用、文章のみとマインドマップ版から選択〉

【使う場面】
各教科の単元や授業ごとに1枚
【狙い】
・編集力と発信力の向上を促します。
・完成した内容を読み上げれば、「今回の授業で大事だと考えた内容」というテーマで発表する「発表用用紙」になります。

〈主な手順と狙い〉

・上段部分に、授業内容と目当てを書きます。
《ポイント》新聞の見出しのように、「何があったか」と「その意義」を明記する形です。
【狙い】振り返りの際の利便性の向上。また、目当てで「今回の授業が将来どのように役立つか」まで記入すれば、「何のために勉強するか」を明確化でき、主体性を育む手段になります。

・そのすぐ下に、授業の内容の最も重要な部分について「まとめ枠」に書きます。
《ポイント》
大事な内容から順番に書く「逆三角形の文体」(新聞の書き方)を自然な形で習得させます。
「まとめ」が、新聞のリード(記事のポイントをまとめた第一段落、導入部)に相当します。
教諭が書く内容を指示せず、子どもが自ら考えて書く手順にすると、「編集力」が育まれます。
【狙い】
振り返りの際の利便性を向上させます。
自分が見やすかった体験を通して、「逆三角形の文体」は、情報を分かりやすく発信できるという理解を促します。

・最後の枠には「意見・感想」を書きます。
《ポイント》
最後をコメントで締めくくる「新聞記事のパターン」の一つを用いています。
【狙い】
自分の意見を発信する習慣を育みます。また、「授業の内容」という「事実」と、「自分の意見」という「主観」を切り分けて書く習慣を身につけてもらいます。

(2)新プリストーミング(グループ活動用)

【使う場面】
単元ごとの新プリを使った後、「テストの内容を予測する」という課題解決に向け、グループ活動用に使います。
【狙い】
・大事な点から順番に大きく書く「新聞の編集手法」の習得を促します。
・相手の意見を否定せずに受け付けて、さまざまなアイデアを生み出す「ブレインストーミング」を参考に考案。相手の意見を受け止めてから考えを整理するコミュニケーション力の向上を促します。
・全ての意見に価値を持たせる仕掛けで、新聞の「公平」「公正」の視点を育みます。
・授業におけるグループ活動について、一から企画するのではなく、「授業」を題材に、「テスト勉強」と言う課題解決に取り組んでもらう形です。
・教諭側は、普段の授業で児童の主体的な活動を促せます。児童側は、課題解決に向けた過程の習得と、通知表に直結するテスト勉強を同時に行えるという利点があります。授業の内容を理解できていなかった児童にとっては、人の意見を聞いてテスト勉強に反映させられる点もあります。

〈主な手順と狙い〉

・司会者と記録者を決めて、5〜6人のグループごとに話し合います。
《ポイント》
「ブレインストーミング」をベースにしているので、全ての意見を「いいね!」と受け入れます。
【狙い】
将来、「答えのない問題」と向き合う時にも役立つように、「アイデアを収集するためにどうすれば良いか」という過程を学んでもらいます。

・意見が出そろった後、テストに出る可能性が高い順に意見を整理します。
《ポイント》
新聞で「大事な内容から順番に紙面を割き、記事を配置する」という形式を応用して枠を設定しています。
【狙い】
課題を解決する際、他の意見を聞きながら「解決策」を導き出していく過程を身につけてもらいます。一方で、伝えたい内容をどう配置していくかの習得を促し、発信力を向上させます。

・「テストに出ない」と考えられる意見も残してもらいます。
《ポイント》
「公平性・公正性を重視し、多数派・賛成派だけでなく、少数派・反対派も合わせて示す」という新聞の形式を組み込んでいます。
【狙い】
少数派の意見も尊重する「公平性」「公正性」を自然と身につけられるようにしています。実際、「テストに出ない」と思っていても出る場合があり、少数派の意見も貴重という気づきを促します。

(3)新エンパマップ(個人のまとめ用)

【使う場面】
新プリストーミングの後、「テストの内容を予測する」ため、個人で意見を整理する際に使います。
【狙い】
・自分の課題を解決をする際、自分の考えと人の意見を踏まえた上で、最終的な結論を整理。
・整理した内容に対する自分の強み、弱みを踏まえて対応する過程を通して、自己分析力と課題解決力の向上を図ります。

〈主な手順と狙い〉

・新プリストーミングの結果に対し、「共感」と「自分の考え」を踏まえて、テストに出る可能性が高いと思う順に内容を書き込んでもらいます。
《ポイント》
人の意見への共感に着目した「エンパシーマップ」を踏まえています。
【狙い】
人が何をどう考えているかを踏まえる手順を通して、コミュニケーション能力の向上を図ります。
《ポイント》
重要だと思うことから、順番に大きく書けるように枠を配置。「大事な点から書く」「ビジュアルを使って分かりやすくする」という新聞の基本を大事にしています。
【狙い】
伝えたい内容をどう配置していくかの習得を促し、発信力を向上させます。

・書き込む枠には、どれだけ理解しているかを示すマークがあり、色分けしてもらいます。
《ポイント》
課題の達成に向け、具体的な戦略を立てるために役立つ「TOWS(トゥーズ)分析(「機会」と「脅威」、「強み」と「弱み」の組み合わせで分析)」を踏まえています。
【狙い】
テストで出ると予測した内容に対し、自分の理解度(強み、弱み)はどうなのかを客観的に把握できるようにし、自分は勉強をどう進めれば良いのか考えられるようしています。

(4)新プリコラム(個々が主張をするとき用)

【使う場面】
子どもに意見を述べさせたい時に使います。例「総合学習で学んだことのまとめ」「友達のいいところの発表」「相手の同意を得たい時の論理的文章の学習」など
《ポイント》
新聞の「社説」の型をもとに枠を配置。新聞記事の写真のように、文章を絵で表現する枠も設けています。
【狙い】
将来、面接やプレゼンといった場面で役立つように、意見を主張する型を習得できるようにしています。文章を絵に変換する作業を通して、表現力も養います。

〈主な手順と狙い〉

・「めあて」を書き込んだ後、「リード(主張の要約)」を書いてもらいます。
【狙い】
今の学びが何に役立つのかを自覚して主体性を持ってもらいつつ、重要な内容から書く「逆三角形の文体」の習得を促します。

・リードでは、「何について主張するのか」という「テーマ」と、「そのテーマに対する私の主張」を別々に書き込んでもらいます。
【狙い】
「事実」と「主観」を切り分けて書く習慣を身につけてもらいます。文章の締めくくり方や分量も指定しており、分かりやすく意見を伝える型を自然に身につけられるようにします。

・「テーマを選んだ理由」と「私の主張をした理由」について、具体例も交えながら書いた上で、「主張をさらに具体的に書く」という流れで取り組んでもらいます。
《ポイント》
「論理的な文章の型」として「PREP(プレップ)法」も取り入れています。「PREP」は、「Point(要点)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(要点)」の頭文字です。
【狙い】
社会に出てから「論理的な発信」ができるようにします。

・「タイトル」について、主張の内容で「一番価値が高いと思う内容」「最も訴えたい内容」を「五・七・五」で表現してもらいます。
《ポイント》
新聞の見出しは「簡潔な記事の極致」とされており、それを川柳の形で表してもらうようにしました。
【狙い】
編集力を鍛え、端的に発信する力の向上を図ります。

・最後に「主張に関連した絵」を書いてもらいます。
《ポイント》
新聞記事は、写真や図がセットになって分かりやすい発信につなげている点を踏まえました。
【狙い】
絵の描写を通して子どもの表現力の向上を図るとともに、取り組んだ内容についての記憶の定着にもつなげます

(5)新プリエッセー(起承「展」結型、作文・感想文用)

【使う場面】
相手の関心を引きつつ、自身の思いを論理的に伝える時に使います。例「授業内容をテーマにした作文」「読書感想文」など
《ポイント》
新聞の「読み物」(速報性の高いニュースではなく、じっくり読んでもらう連載など)の型をもとに起承「展」結の文体で作ります。

「印象的な話」から始め、関心を引くのが特徴で、新聞では速報性の高いニュースではなく、じっくり読んでもらう連載などで使う型です。

他の新プリシリーズは、新聞のニュース系と同様、最初に大事な内容をまとめる「逆三角形」の文体でした。
【狙い】
読書感想文といった、子どもにとって身近な課題への対応力が向上し、将来、講演やプレゼンといった場面で役立ちます。

□書き方の流れ□

書く順番は「承」が先で、「承」→「起」→「展」→「結」です。

事例…平和学習の一環で「平和な世界をつくる」がテーマの場合

「承(問題提起)」…これまでの授業で「平和とは何か」を学んだ内容を踏まえ、(1)「どんな状態かといった内容・キーワード」と(2)「その理由」を書きます。

【狙い】何について書くのかを明確にし、次の展開を書きやすくします。

「起(印象的な場面で文章を始める)」…「承」のキーワードについて、それを直接書かずに、自分の経験と関連した内容の場面や思いを具体的に書きます。「何それ」「答えが知りたい」と思わせることができれば成功です。

【狙い】一つの事を別の言葉で書けるようになると、表現力の幅が広がり、発信力の強化につながります。また、一つのことを具体的に表現できるようになると、文章の説得力の強化や、価値を明確にする力がアップします。

「展(話をひろげる、問題解決策を提示)」…これまでの授業で話し合った「平和な世界にする方法」を踏まえ、自分が考える課題解決策を書きます。「承」で示した内容をどうすれば実現できるのかを説明する形です。
※本来の「転」は「転じる、変える」意味合いとなるため、「ひろげる」意味を持つ「展」を使っています。

【狙い】課題に対し、周りの人と話し合ったりしながら解決策を考え、自分なりの言葉で示す力は〝一生の宝〟になります。これからの人生の中で、身の回りの課題から社会の問題まで、さまざまな場面でその力が必要です。

「結(話を結ぶ、自分はどうするのかを表明)」…「展」の課題解決策に関連し、「自分はこうしていく」という思いや抱負を書きます。

【狙い】自分の提案に対し、自分の行動まで示せる力を付けておくと、課題解決能力がさらに向上します。周りからの信頼も得やすくなり、コミュニケーション能力の向上にもつながります。

「見出し」…その後、文章の大事なポイントを見出しで伝えるため、「展」「結」の中からキーワードを抜き出して見出しを作ります。

《ポイント》①てにをは(助詞)を省く②体言(名詞)止め③倒置法 −といった手法を文の意味がわかる範囲で駆使すると、印象的な見出しになりやすいです。

【狙い】大事なポイントを相手に伝えつつ、その文章を読みたいと感じさせる「見出し」を作る力は、情報をまとめる力や発信力の向上につながります。

「絵」…見出しの内容を分かりやすく絵で表現します。

【狙い】文章を絵で描くと、文章で表現できていない点に気付いたりし、結果的に文章の表現力の向上につながります。情報を発信する際、ビジュアルにもこだわりながらまとめる力が身につくと、発信力が向上します。

◇反響「分かりやすい」

・「新プリ」は、大阪市立鶴見南小学校5年生(全3クラス)の社会科「新しい社会5」(東京書籍)の授業で2022年度の9月中旬から導入。最初は単元用のみで、3学期までかけて内容を改善しつつ、4種類まで増やしました。
・導入月の9月の下旬には使い心地の調査を行い、有効回答者数は114人。その結果は下記のとおりです。


→新プリの書き方は「分かりやすい」が、「当てはまる(42%)」「どちらかといえば当てはまる(37%)」で79%。
→「後で読むとこれまでのノートの書き方よりも内容がよく分かる」が、「当てはまる(38%)」「どちらかといえば当てはまる(39%)」で77%。
→「今後も使いたい」が、「当てはまる(39%)」「どちらかといえば当てはまる(45%)」で84%。

◇効果

・社会科のテストは「社会科・カラーテスト」(日本標準)を使い、学年平均点は1学期が90点。Nプリを途中から導入した2学期が91点。4種類のNプリシリーズがそろった3学期が94点と上昇傾向でした。

◇「新プリ」のオリジナルキャラクター「エヌプリー」

名前:エヌプリー(犬科・オス)
名前の由来:「Newspaper(新聞)」と「Note(ノート)」の頭文字「N」と「プリント」の「プリ」の組み合わせ
誕生日:2023/4/18(発明の日)
性格:普段はおっとりしているが、えんぴつを手にすると情熱的になる
特技:事実を分かりやすく、価値を明確に表現すること
趣味:新聞紙を魔法のじゅうたんのようにして行きたいところに行くこと
好きなもの:子どもの情熱
苦手なもの:何が言いたいのか分からない発言
くせ:気持ちが高まってくると語尾が「N(ニュー)」(ギリシャ語アルファベット読み)になる

◇LINEスタンプも販売中!

《LINEストア》新聞型教材”新プリ”の犬キャラ[エヌプリー]

◇教育者のみなさまへの連携のお願い
現在、教育現場で「新プリ」を活用し、子どもの編集力や発信力の育成に向けて連携していただける方を募っております。
ご関心を持っていただけるようでしたら、お手数をおかけしますが、問い合わせフォームからご連絡をいただければ幸いです。

◆この取り組みは、大阪・関西万博の「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創チャレンジに登録されています。

目指せ!! 「編集力」「発信力」育成の〝集合知〟!! 全ての子どもが「新聞記者」レベルの素養を備えてから社会に出る「教育の仕掛け」をつくります!

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