■〝起業力〟〝主権者力〟も7割向上、新聞形式プリント「新プリ」実践者アンケート■

 ・ノート代わりの新聞形式プリント「新プリ」教育法で学んだ小学生を対象に第3回アンケートを行い、「新プリ」実践前と比較して「自分で考える力」や「まとめる力」が伸びたと答えた割合が約9割に上っていました。

 ・また、起業家精神や主権者に必要な力を想定した質問にも7割超が「向上」を示す回答となりました。

 ・先生方の専門スキルと新プリを組み合わせることで、全国学力テストの課題克服から、大人になって必要な力の育成まで貢献できる可能性が示されました。

 ◆アンケートの対象◆小学6、4、3年278人

アンケートは、大阪市立鶴見南小学校で新プリに取り組んだ6、4、3年生が対象で、有効回答数は計278人。2月26〜29日に、14項目について「思う」「やや思う」「あまり思わない」「思わない」の4段階で答えてもらいました。

 ◆新プリの内容と開発した背景◆まとめが苦手

新プリは、最初に大事な内容を書く文体をはじめ、見出しやビジュアル(写真やグラフ)、レイアウトまで、「新聞の特徴」をノート代わりに使えるように反映させたプリント。新聞の号外の型を落とし込んだりしています。

左が新プリ・単元用の一例。右が新聞の号外の主な構造

子どもたちの学力の課題は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)によると、小学6年の国語で「複数の情報を整理して自分の考えをまとめたり書き表し方を工夫したりすることに課題がある」(2023年度)とされています。

また、世界的な課題では、ユニセフ(国連児童基金)が「世界の10歳児のうち、3分の2が簡単な文章読解ができない」(2022年9月)と警鐘を鳴らしています。

そんな中、新聞の型を活用して子どもたちの編集力や発信力を育成するとともに、運用方法を工夫して社会人基礎力の向上にも結びつけているのが新プリです。ここで習得した型は、社会に出てからでもそのまま使える型となります。

さらに学校の先生と子どもたち、元新聞記者が連携し、継続的に新プリの内容を改善、拡充。より効果的な形式を追求し、選択肢を増やし続けているのも特徴です。


子どもたちの使い方の工夫に応じて、新しい「新プリ」を作成した一例

 ◆新プリの実践内容◆先生方が使い方を工夫

導入していただいた先生方によると、6年生は、5年生の時の2022年9月から新プリに取り組み、社会科で毎回実施。授業内容をまとめる単元用▽テストに出る内容を議論するグループ用▽グループ活動の個々のまとめ用−を中心に用いました。

テスト前に「新プリ」を読み合うようにし、子どもたちはグループ用を見ながら問題を出し合って復習したりしました。

このほか、意見・主張用▽自由記述のテスト用−も用い、社会科以外では総合的な学習の時間でも4回活用。作文・感想文用のコンテストにも参加してもらいました。

4、3年生は、理科の各単元のまとめ用として2023年9月から開始。まとめた内容を読み合ったほか、クラスによっては子どもたちの投票でより良い内容を顕彰するコンテストを実施し、評価の高かった新プリを壁で掲示したりしました。

先生によるコメントの書き込みやシールの貼付も行いました。

また3年生では、社会科と総合学習の時間を使った「社会見学」後、まとめやふり返りで各単元用を活用。計3回実施しました。

 ◆結果について◆上位5項目は「発信力」「編集力」関連

回答の全体平均のうち、肯定的意見(「思う」「やや思う」の合計)の割合が高い上位5項目は次の通りです。

〈1〉勉強しやすい(89.9%)
〈2〉「自分で考える力」が伸びた(89.6%)
〈3〉復習しやすい(88.5%)
〈4〉「まとめる力」が伸びた(88.1%)
〈5〉記憶に残りやすい(84.9%)

先生方の専門性の高いご指導の下、6年生と3、4年生では新プリの活用方法が違うものの、どの学年平均でも上記の5項目については8割を超えていました。

新聞記事の多くは、「情報の価値を分かりやすく瞬時に伝える」技術を駆使して作られています。

新プリにはその要素を取り入れているため、「勉強しやすい」▽「復習しやすい」▽「記憶に残りやすい」−といった項目が上位にくる結果になったとみています。

新聞の「発信力」に関連した要素は、相手に伝えるだけでなく「復習」や「記憶」にも役立つためです。

一方、「自分で考える力」や「まとめる力」は、全国学力テストの結果などを踏まえ、将来につながる力として伸ばすのが「新プリ」の目的の一つです。

先生方は、子どもたちが自分で授業内容をまとめられるように運営してくださり、子どもたちも意欲的に取り組んでくださったおかげで、新プリの狙いに応じた結果となりました。

 ◆結果について◆〝答えのない時代〟-より満足のいく人生を歩めるように

近年の国内の社会情勢を踏まえ、第3回アンケートで新たに加えた質問が以下の2項目でした。

・「使いにくい」「不便だ」と感じる時は、工夫して取り組もうと思うようになった。
・自分たちの力で、今あるものをより良い内容に変えられると思うようになった。

この2項目で測りたかったのは、「起業家精神(アントレプレナーシップ)に関連する力」と「主権者としての力」です。

アントレプレナーシップとは「様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず、自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神」(文部科学省)。

また、主権者教育は「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと」(総務省)とされます。

グローバル化や技術革新が進み〝答えのない時代〟とされる中、次代を担う子どもたちに持っていてほしい力です。

その力の育成のために必要だと考える一つが「子どものころからの経験」です。そして、子どもにとっての「社会」の一つは「学校生活」です。

新プリは、子どもたちの使い方、指摘や要望を受け、個々に合った新しいパターンを作り続けています。

子どもの立場でも新たな価値を生み出したり、大人たちと一緒になって現状をより良い形に変えていける経験を積んでほしいと考えています。

新プリの運営方法を経験した子どもたちの反応は、全体平均の「思う」「やや思う」の合計が2項目ともに7割を超えました。

・「使いにくい」「不便だ」と感じる時は、工夫して取り組もうと思うようになった。(73.2%)
・自分たちの力で、今あるものをより良い内容に変えられると思うようになった。(76.4%)

今後も新聞形式プリント「新プリ」の実践を通して、子どもたちが将来、より満足のいく人生を歩めるよう努めていきます!

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この取り組みは、大阪・関西万博の「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創チャレンジに登録されています。

目指せ!! 「編集力」「発信力」育成の〝集合知〟!! 全ての子どもが「新聞記者」レベルの素養を備えてから社会に出る「教育の仕掛け」をつくります!